超初級編?「まんがでわかるアドラー勇気の心理学」

初級編に相応しいテキスト「アドラー『人生の意味の心理学』 2016年2月 (100分 de 名著)」を読みましたが、『第1回 人生を変える「逆転の発想」』『第2回 自分を苦しめているものの正体』『第3回 対人関係を転換する』については、納得できない事柄もありますが、それなりに理解できました。しかし、『第4回 「自分」と「他者」を勇気づける』がどうしても理解できません。第3回までの話の流れに沿っていないというか、いきなり急展開しているような感じすらします。

100分 de 名著 アドラー「人生の意味の心理学」

第4回 「自分」と「他者」を勇気づける

アドラーがゴールと考えた幸福とは何か? それは「共同体感覚」という概念に象徴される。「共同体感覚」は、他者を仲間と見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられること。そのためには「自己への執着」を「他者への関心」に切り替える必要があるという。そのための条件としてアドラーが挙げるのは「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」。これらは決して道徳的な価値観などではなく、幸福に至るための「手段」だという。ありのままの自分を受容し、無条件で他者を信頼する中で、「私は誰かの役に立っている」という貢献感を実感すること。それこそがアドラーが考える幸福である。そして、アドラーは、幸福に向かって自力で課題に立ち向かっていけるよう働きかけることを「勇気づけ」と呼び、自己と他者を常に勇気づけていくよう呼びかける。

そこで、もっと分かりやすい表現をしている書籍を読むことにしましたが、今の世の中で「分かりやすい」といえば漫画です。


マンガでやさしくわかるアドラー心理学
マンガでやさしくわかるアドラー心理学2 実践編
マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編
の3部作を選ぶのは出費が大きすぎます。


まんがで身につく アドラー 明日を変える心理学
こちらはカフェのマスターが客の悩みに答えるストーリー構成のようです。中身を見ていませんが「嫌われる勇気」の漫画版のようなものでしょうか。


マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編
心療内科シリーズは不真面目ぽさを感じるためパス。


コミックでわかるアドラー心理学
こちらはアパレル店の元店長と塾の先生の話。なんとなく内容が想像できます。


まんがでわかるアドラー勇気の心理学―自分を変える!組織が変わる!
女子サッカー部の副キャプテンと部の立て直しを命じられたコーチの話。
これはもしかしたら「もしドラ」の展開だろうかと少しばかり期待して…


まんがでわかるアドラー勇気の心理学―自分を変える!組織が変わる!

正直言って、少しでも立ち読みができたら購入しなかった可能性大です。


アドラーの心理学を使って、弱小サッカー部をどうのように強く成長させていくのかというサクセスストーリーかと、期待してしまいますが、そのようなことは全くありません。

大会で優勝しなければサッカー部を廃部にするという会社の方針に動揺するメンバーたち。しかし、コーチから「チームが強くなるためには自分が変わらなければならない」と言われたメンバー全員がその気になっただけで、いきなり強豪チームになり、決勝戦まで進むという、むちゃくちゃな構成。


各章の“つかみ”の部分を漫画で表現していますが、肝心のアドラー心理学の解説については、「アドラー『人生の意味の心理学』 2016年2月 (100分 de 名著)」にイラストを追加して、少しだけ分かりやすい表現になっているだけです。

全6章の構成になっていて、各章の表紙にアドラーの言葉が書かれています。

(1)人は主観や先入観で思い込みの世界に生きている。まずは自分の思い込みに気づくことで、問題の解決のきっかけをつかむ

(2)内面の悩みは、すべて対人関係の悩みである。どんなものの見方、考え方が自分を苦しめているのか知る。

(3)無意識だと思っていることも意識とつながっている。癖や習慣など意識せずに行っている行動を意識的にコントロールできることを知る。

(4)人は変わろうと思えば、変わることができる。ただし、自分をよりよく変えるためには大切なポイントがある。

(5)自分を変えるだけでは、共同体で生きる意味がない。自分を中心としてよりよい対人関係を築く大切なポイントがある。

(6)人の行動は目的によって決まる。そしてその先には人生の最終目標がある。また目標を達成するためには立ち向かわなければならない課題がある。

第5章と第6章が「100分 de 名著」の第4回に該当する部分ですが、「共同体感覚」の概念が具体的にどういうことなのか、いまいちよく分かりません。ここをサッカー部という舞台でどう表現しているのか期待していたのですが、サッカー部とは無関係に展開しています。

全体を通しての分かりやすさのレベルとしては、「アドラー『人生の意味の心理学』 2016年2月 (100分 de 名著)」と全く同じですし、書かれていることも同じです。同じ本を2回読んだのかと錯覚するくらいです。

この書籍のタイトルが「アドラー心理学」ではなく「アドラー勇気の心理学」となっている点については、「他人の評価に左右されてはならない。ありのままの自分を受け止め、不完全さを認める勇気を持つことだ」「人の心理は物理学とは違う。問題の原因を指摘しても、勇気を奪うだけ。解決法と可能性に集中すべきなのだ」のように“勇気”が使われているからです。

両誌とも初級編に相応しい内容ですので、イラストが欲しければ「まんがでわかるアドラー勇気の心理学―自分を変える!組織が変わる! 」、文字だけで良ければ「アドラー『人生の意味の心理学』 2016年2月 (100分 de 名著)」、という選択肢になります。



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