20パーセントオフ

「20%off」って何のことか。スーパーのチラシ広告ではない。ましてやカロリー20%カットでもない。体重が20%減ったら嬉しいがそんな話ではない。

唐突に宣言された「20%off」とは私が勤める会社で発表された経費削減作戦のことである。「まずは仕入れを全て20%off」にしろというめちゃめちゃな指示が全社に通達された。それを受けた担当者は仕入れ業者に「なんとかして」とお願いするわけだが、お願いする側もされる側も嫌な思いをしているのは間違いない。これが「電話で」というところがなんとも田舎の中小企業らしいやり方。

隣の市の某大企業さんは仕入れ業者を全部集め「皆さん、○月○日から納入単価を△△%値下げしてください。もしできない企業さんは取引停止します。それではよろしく。」とやるそうだ。それを言われた企業は自分のところが仕入れている業者を呼びつけ「○○さんが△△%値下げしろと言った。だからおたくもよろしくね。」とやるそうだ。これが連鎖的に続き最後に苦労するのが末端の企業。中間業者は20%offって上から言われたら下には30%offってやるわけです。そうすれば少しでも自分のところの負担が減る。極端な話、スタート地点では10%offだったものがゴール地点では50%offかもしれない。

ところで何故田舎の中小企業である私が勤めている会社がそんな暴挙に出たかといえば、「大ピンチ!」その一言。昔から崖から落ちなければ何もしない体質だったので、いよいよ危ない状況になってから「なんとかせねば」と動き出したわけです。ゴロゴロと坂を転げ落ちている時に「いつかは崖から落ちるぞ」と真剣に考えておけば良いものを、目先の忙しさを理由に何もしてこなかったツケがいよいよ来たわけです。

「もう崖から落ちた」とたぶんいえる状況なのでしょうが、悪運だけは強い会社なのかきっと途中の木にぶら下がることができ、「あっ」と気が付いたのでしょう。どこにも引っかからずに奈落のそこに落ちていく企業さんもあるので、それに比べたら「もがく」ことができるだけマシかもしれません。でも必至にジャンプしようとして枝がボキッって折れなきゃ良いのだが。

「枝が折れる」とは、仕入れ業者が「あんたのところにはもう売ってやらん」とサジを投げることや、こんなアホなところにはもう居られないと社員が逃げ出すことである。

ところで「仕入れ○○%off」だが、なぜこのようなことをエライさんが言い出しかと思えば「あの日産が成功したのだからウチだって」というほとほと呆れる発想からきているらしい。日産が「TOYOTAがやっているのだから」と言うのなら分かるが、田舎の弱小中小企業がそんなこと言っても大丈夫なのか。

蟻が象の真似をしたって猫に踏み潰されるだけだぞと私は思う。
いや“蟻”は言い過ぎか“鼠”だな。たぶん。


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