退職金(1)

米国では10数回の転職は当たり前のようで、最近の日本の若い人の中にはそのような考え方を持つ者もいるようです。

自分のキャリアのステップアップのために転職することは良いことだと私も思います。“会社”というしがらみにとらわれることなく、自分がやりたい “仕事”に対して常に上の目標を設定して突き進む。現職の職場ではその目標が達成できないならば、新天地を求めるのも已むを得ない。

しかし、目標や目的がはっきりしていないのに「今の世の中、転職なんか当たり前」と簡単に鞍替えするのは考え物です。単純に「今できること」を基準に新しい職場を探したとしても、似たような会社規模、似たような仕事内容、そして前職と変わらない収入を得るのに精一杯でしょう。ステップアップ以外の転職の場合に収入が減るのは常識です。

とはいっても「会社が潰れる」「このまま仕事を続けていたら病気になる」など切羽詰った状況ならば少しでも早く見切りを付け新天地を探すべきです。

転職するにしても、日本の企業の給与体系を考えれば1回、多くても2回までに抑えるべきでしょう。転職したからといって給与が上がるとは限らず、退職金も激減します。

退職金というものは企業で長年勤め上げた人への慰労金みたいなものですから、短期間でコロコロ職場を変わるような人にはその慰労金もあまり支給されない仕組みになっています。

40年間定年まで勤務した人の場合は基本給の約40ヶ月分が退職金として支給されます。
ところが10年程度で自己都合の退職の場合は減額され7ヶ月分程度しか支給されません。
退職時点の基本給で計算されますので、仮に次のような基本給を貰ったとした場合

例えば転職を一度もせずに定年まで働いた人の基本給が次のようだとします。
30歳 25万円
40歳 30万円
50歳 40万円
60歳 50万円
そして10年ごとに転職した人の基本給が次のようだとします。
30歳 25万円
40歳 30万円
50歳 35万円
60歳 40万円
前者が受け取る退職金は「2000万円」、後者が受け取る退職金の総額は「910万円」となります。
数年単位で転職した場合はほとんど退職金をもらえませんので、永年勤続者との差額は開く一方です。

私が何を言いたいのか。
退職金という制度も「終身雇用」に基づいたものであるということです。


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