下流社会

下流社会 新たな階層集団の出現
下流社会 新たな階層集団の出現
光文社新書
三浦 展 (著)

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」と同様に何故か売れに売れている不思議な本です。

「下流社会」って何だろうと思わせるタイトルの勝利でしょうか。(今回もタイトルに惹かれて買ってしまった)

これから買おうかどうしようか悩んでいる人には、それを決断するための方法があります(大げさすぎるか)。

“はじめに”の冒頭にある簡単なアンケート。

1.年収が年齢の10倍未満だ
2.その日その日を気楽に生きたいと思う
3.自分らしく生きるのが良いと思う
4.好きなことだけして生きたい
5.面倒くさがり、だらしない、出不精
6.一人でいるのが好きだ
7.地味で目立たない性格だ
8.ファッションは自分流である
9.食べることが面倒くさいと思うことがある
10.お菓子やファーストフードをよく食べる
11.一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごすことがよくある
12.未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上の方)

半分以上当てはまってしまったら、あなたはかなり「下流的」だそうです。(著者曰く)

残念ながら当てはまってしまったら、買うしかない?

当てはまらないながらも、「自分は中の中だ」と根拠も無く思い込んでいる人も対象になるかも。

「いつかはクラウン」から「毎日100円ショップ」の時代へ
もはや「中流」ではない。「下流」なのだ

「下流」とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ。(「はじめに」より)
「下流社会」とは具体的にどんな社会で、若い世代の価値観、生活、消費は今どう変わりつつあるのか。マーケティング・アナリストである著者が豊富なデータを元に書き上げた、階層問題における初の消費社会論。

“はじめに”で「『下流』の定義」と「『世代』の定義」をしてくれているので、まずは準備運動は完了。

テンポ良く第一章へ突入して、55年体制と始まりと共に「いつかはクラウン」を合言葉とした一億総中流化時代へ突き進むが、いまは「いつかはレクサス」ではないという興味を惹かせる話題で一休み。

そして、第二章からはサブタイトルである「新たな階層集団の出現」を延々と解説するのだが…。

解説している内容は、3400名(?)を母数としたアンケートデータを元とした数々の著者の“仮説”である。

“仮説”を裏づけするものとして数多くの文献を引き合いに出しているが、「誰々さんはこんなことを言っているが」のような皮肉めいた記述にはうんざりする。読み飛ばそうとしても、いきなりそれが現れるから、避けることができない。

正直言って、第二章から第八章までは読む必要は全く無い。暇つぶしにどうぞ。

最後の“おわり”を読むと…………「何言ってんだコイツ」とムカついてきた。

「下流社会」を考えるための文献ガイトなる一覧表には、ズラッと80冊以上の「下流社会」の元ネタになりそうなタイトルの本が並んでいる。

ようするに「下流社会」という本は著者のオリジナルではなく、いろんな著名人の意見を纏め上げたというもの。

「たくさん本を読むのは大変だから、とりあえず一冊読んでおこうか」という場合に役に立つ本。

私のように流行のことを知りたいだけならば、“はじめに”と第一章だけ読めば十分。

ところで「新たな階層集団の出現」の“新たな階層集団”が何なのか書かれているのでしょうか。私には分かりませんでした。「今は階層化社会である」を前提にアンケートデータから「これはこの階層に当てはまる」と延々とやっているだけですから、“新たな”がどれなのか最後まで分かりません。

「下流社会」を解説する本が必要なのでは? いやはやタイトルに騙されました。

反面、「統計」が大好きという人はハマってしまう可能性もありますので、“諸刃の剣”のような本かもしれません。



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