ガルパンの劇場版のブルーレイが発売されて再び「大洗」が注目されていますが、それは“聖地巡礼”に大いに関係していると思われます。このタイミングで発売された新刊なら面白い内容のはずということで、中日新聞の広告欄に掲載されていた書籍を注文。
日記ネタにするのが遅れましたが、実は1週間前に読み終えています。日記ネタにするのが遅れた理由は、この書籍に影響されて、あれこれと物欲が爆発したためですが、そのネタはまた後日になります。
酒井 亨(著)「アニメが地方を救う! ? – 聖地巡礼の経済効果を考える -」 2016/6/8
アニメ作品の舞台となった場所、そのモデルとなった場所あるいはロケ地などをファンたちが訪ねる「聖地巡礼」。ファンたちが生み出したこのムーブメントは、さまざまな自治体、商工会、商店街を巻き込んで、地域振興の起爆剤となっている。『中韓以外みーんな親日、クールジャパンが世界を席巻中!』の著者が地道に積み重ねてきたフィールドワークをもとに、製作サイド、地元、ファンの三者のハッピーな協力体制で成功した事例、あるいは失敗した事例を検証。「聖地巡礼」という名の「アニメまちおこし」がさらに地方を活性化していく可能性を探る。
今までいくつか発売されてきたような「聖地巡礼のガイド本」ではありません。経済学者が経済学の視点から真面目に聖地巡礼を研究した内容になっています。著者がアニメに興味を持ったのは十年少し前であり、たまたま著者の地元を舞台にしたアニメの存在を知り、そのアニメが地元に与えた影響が大きかったことで、研究対象にしたようです。聖地巡礼の対象になるであろう地域の役場、商工会議所、観光協会などを“取材”できたのは、大学に勤務しているという肩書があるからこそともいえます。
小説、漫画、映画、ドラマなどの「作品の舞台を訪れること」を目的にした旅行は「コンテンツツーリズム(舞台探訪、ロケ地巡り)」と呼ばれているようで、アニメならば「アニメツーリズム」となるわけですが、それをカッコよく「聖地巡礼」と呼ばれています。
ロケ地巡りそのものは随分昔からあって、漫画「頭文字D」の影響を受けた人ならば、バトルステージを実際に自分の車で走ったかもしれませんね。私もその一人です。
ただ、昔の「ロケ地巡り」と今の「聖地巡礼」は違うと著者は断言しています。
朝ドラや大河ドラマの放送中は、その舞台になっている地域はそれなりに盛り上がりますが、放送が終わった途端に潮が引いていきます。ところがアニメの場合は、放送が終わっても数年以上“ファン”が訪れるため、ひとつの“まちおこし”になっているとのこと。
「聖地巡礼」の対象になりそうな膨大の作品の中で「成功」している作品は、著者の調査によると、「ガルパン」、「らき☆すた」、「花咲くいろは」、「あの花」、「けいおん!」、「たまゆら」、「Free!」、「氷菓」だそうです。
「花咲くいろは」の「湯湧ぼんぼり祭り」は架空の祭りですが、実際のイベントとして毎年開催されるようになりました。この先の何十年も祭りが続けられることがあるのならば、祭りに参加する人たちは、「アニメが切っ掛け」であることを知らず「大昔から続けられてきた祭り」であると思うようになるのではと著者は述べています。
参考: 湯涌 ぼんぼり祭り
「ガルパン」のお陰で大洗の「あんこう祭り」は11万人も集める大掛かりな祭りになっています。
参考: 11万人を集客するあんこう祭の勢いを最大限に活用して(大洗町長)
観光客目当てでドラマのロケ地として誘致するという姿勢では、上手くいくわけがない理由がこの書籍を読めば分かります。役場、商工会議所、観光協会の誘致担当者は必読です。
「成功」とは、作品自体の評価とDVD・BDの売上も良く、当該地域側も作品を愛して適切に盛り上げファンを受け入れてくれ、それによって観光客、特に若者が増え、カネも落ちて、まちが活気づいた感触があるというところだろう。
「聖地巡礼って流行っているの?」と少し気になる人も読んでみることをお勧めします。