ソフトウェア会社に勤務する東山結衣は「定時で帰る」ために全力を尽くす。定時で帰るためには時間内にキッチリ仕事を終える必要があり、そのためには誰よりも早く仕事ができることが必須。会社に長くいることを善とする人たちとの闘いの物語である。という簡単な物語ではありません。
序盤こそ転職組で意識高い系の三谷佳菜子や、産休を短縮して早々と復職した賤ヶ岳八重、とにかく会社に長時間居れば良いと思い込んでいる吾妻徹などとの絡みはありますが、中盤以降は存在そのものがどこかに消えます。東山結衣の元婚約者であり転職してきたスーパーSE兼スーパーマネージャーである種田晃太郎を中心に物語は進みます。そして、元IT会社の社長であり会社を潰して転職してきた福永清次の駄目さ加減が「あるある」過ぎてシャレにならない設定です。
東山結衣が勤務する会社の社長の方針は東山結衣に近いものがありますが、転職組、意識高い系、仕事命の人たちに東山結衣がいかに翻弄され巻き込まれていくのか、そしてゴールはどこにありどのような形で迎えるのか。自分の会社がつぶれた最大の要因を分かっていない福永清次が取ってきた案件が、物語を加速させいっきにゴールに向かいます。
序盤の「定時で帰る」「有給つかう」に関しては、少し前の私の勤務先でも見られた光景です。とにかく会社に来て長くいることを美徳とする人たちが大勢いた時代は、「定時で帰る」「有給つかう」の人たちはマイナス査定されたのです。それがいかに井の中の蛙だったのかは、中途採用を頻繁にするようになり、当たり前が当たり前じゃないことがようやく表面化したからです。転職してきた人たち、特にそこそこギャラが高い人たちは定時で帰り、有休もキッチリとります。そして、何よりも人事の責任者が世代交代して「おかしいことは正す」となったことで、私の勤務先のようやく普通レベルになりました。
さて、小説「わたし、定時で帰ります。」ですが、ドラマにするとむちゃくちゃ面白いだろうなと思いましたが、吉高由里子主演でドラマ化されていたようです。
2019年4月16日より6月25日まで放送されていたのですが、なぜか観ていません。有料配信Paravi(パラビ)で観ることができるようですが、「有料か~」と迷っていると、なんとCBCテレビで5月8日から再放送されます。