目を引くタイトル「ダイエットはおやめなさい」はひっかけで、正式タイトルは非常に長い「寝たきり老人になりたくないのならダイエットはおやめなさい」で、内容としては「食事制限ダイエットはおやめなさい」です。
寝たきり老人になりたくないならダイエットはおやめなさい――一生健康でいられる3つの習慣 久野譜也 (著)
数多くある「ダイエット」の手法の大多数が食事制限であり、それは手っ取り早く“やせる”ことができるため、飛びつく人が多いのも事実。その食事制限ダイエットの何が問題なのか、とても分かりやすく解説してくれています。ダイエットの事を自分なりに真剣に調べて実践した人ならば、この本に書かれていることは何となく分かっているはずで、「そんなことは知っている」と思いたくもなりますが、いろんなところから得た断片的な情報を改めて整理する人は皆無かと思います。
ダイエット絡みの話は宗教戦争みたいなもので自分が信じていることが正しいと誰しも思いがちです。何らかの「○○ダイエット」が流行る理由はそれを試して“成功”した人がいるからでしょうか。しかし、その“成功”が「健康的に余分な脂肪を減らすことができた」であるのか客観的に判断できているのでしょうか。
そもそも「腹八分目で栄養バランスが良い食事」と「適度な運動」を続けていれば余分な脂肪などつかないはずです。「余分な脂肪を減らす=ダイエット」であるわけですが、ここには大きなワナがあり、それは「体重を減らす=ダイエット」になっている人が多いというわけです。
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“健康的に”やせるトライアングル
・筋トレ
・ウォーキング
・適切な食事制限
そして測定すべきは筋肉量。
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食事制限で減量した場合は、筋肉量が減ってしまいます。過激な食事制限は脂肪より先に筋肉が減るとのこと。ライ○ップは筋肉量の低下を最小限に抑えるためにキツイ筋トレを併用しているわけです。しかしながら「キツイ食事制限」は身体を壊すため「2か月間」という短期集中型というわけです。何か特別な理由があって超短期間でスリムになる必要がある人ならライ○ップ方式も良いかもしれませんが、あの方法は「やめた途端に激しいリバウンドがくる」ため、スリムになった体型を維持する方法を改めて習得する必要があります。
運動ダイエットの代表的なものが「有酸素運動」ですが、これは脂肪も減りますが筋肉も減っていきます。要するに使わない筋肉は退化していくのです。そこで「ダイエットはおやめなさい」の著者が必須事項に挙げているのが「筋トレ」です。何もスポーツジムで激しい筋トレをしろと言っているわけでなく、空いた時間に少しずつやっていけるストレッチレベルの筋トレでOKのようです。これまた要するに日常的に筋肉を使えということです。
ざっくりとまとめると
・適切な食事制限で脂肪を増やさない
・ウォーキングで脂肪を少しずつ減らす
・軽い筋トレで筋肉の退化を抑える
でしょうか。
で、この著者は何が言いたいのか。
・何もしないと筋肉は1年で1%落ちいていく (20歳に比べて70歳で50%減)
・過激な食事制限は3か月間で5%も筋肉が落ちていく (健康寿命が5年短くなる)
・筋肉が衰えると将来的には寝たきりになる
これまたざっくりまとめると「運動もせずに大食いを続けた肥満体が、食事制限だけで体重を落とせば寝たきり老人になるぞ」ということです。
若いころからまともに運動をしてこなかった人が「若いころと体重が変わっていない」場合は、単純に筋肉量が減り脂肪が増えているだけで、体重が変わっていなくても中身は変わっているので要注意。
正しいダイエットを実践して健康的な身体になった後は「腹八分目で栄養バランスが良い食事」と「適度な運動」を続けていけば、元気な老後を送ることができる確率が高まるということです。
なお「糖質制限ダイエット」についても少しだけ触れています。「糖質制限ダイエット」を否定しているわけでなく、炭水化物以外なら好きなだけ食べても良いというわけではないということです。「栄養バランスが良い食事」が基本であり、その「腹八分目」が太らないための条件であり、仮に減量をしたいのなら炭水化物を半分にしましょうということです。炭水化物を減らしてタンパク質を増やして良いというわけではありません。
ウォーキングは最低8000歩、8000×7で週に56000歩必須とのことです。著者は日常生活を少し工夫すればそのくらいは容易いと述べていますが、1日8000歩は結構キツイです。「ウォーキングする」と決めて時間を作らなければクリアできません。実際、朝の散歩で50分真剣に歩いても6000歩いきません。足りない分を休日にカバーしてもそれでようやく最低ノルマであり、あくまでも健康維持のための運動レベルです。
朝の散歩をしていると見かける人たちは常連さんばかりです。そして見るからに健康そうな人ばかりで、とてもダイエットのために頑張っているという人はいません。あくまでも、日頃から身体に気を使っている人が健康を維持するためにやるのが散歩だといえそうです。
とりあえず、「食事制限ダイエット」をやっている人は手遅れになる前に、この「ダイエットはおやめなさい」を読んでみると良いかもしれませんね。