映画「写真甲子園 0.5秒の夏」

北海道東川町で年に一回開催されている全国高等学校写真選手権大会、通称「写真甲子園」。大阪・関西学園の尾山夢叶(笠菜月)、山本さくら(白波瀬海来)、伊藤未来(中田青渚)は、顧問・久華英子(秋野暢子)の言葉に奮起し、「挑戦した人だけが見える世界」を体験したいと願って大会に挑戦した。東京の進学校・東京桜ヶ丘学園の椿山翔太(甲斐翔真)は、唯一の写真部員として廊下の隅で活動しており、幼馴染の中野大輝(萩原利久)とボランティア部の霧島絢香(中川梨花)に頼み込んでどうにかチームを結成し、大会へのエントリーにこぎつけた。
ウィキペディア(Wikipedia)

漫画版「写真甲子園」はドラマ性無しでストーリー云々にも拘っていなくて、あくまでも「写真甲子園」というものは何なのか紹介している作品です。それだとA4一枚で終わってしまうので、いちおう主人公を立てて「写真甲子園」に参加してみたらこういう世界だったという内容です。

だったら「写真甲子園」の実写映画はどうなんだろうと情報無しでポチッしました。

沖縄チームと大阪チームの女子高生たちが楽しそうにスナップ写真を撮っている序盤のシーンは、高校の写真部が舞台の映画っぽくて良い感じですが…

全般的にドラマにならない題材を無りやりドラマにしようとしていることが観ていて伝わってきます。NHKが「写真甲子園」のドキュメンタリー番組を作った方が何倍も良いものになりそうと思えるほど、「写真甲子園 0.5秒の夏」は1本の映画としては成り立っていません。

大阪チームの女子高生3人だけでは映画作品にするのは難しいのか、東京に一人だけの写真部を用意。その彼(本作品の主役)は「写真甲子園」に参加したいために急きょメンバーを2人用意。

もともと歴史ある強豪校の沖縄チームと大阪チームが地区予選を勝ち抜いて「写真甲子園」に参加できるのは当然として、なぜ部員が実質一人の彼が地区予選を突破できたのかは不明。それほどの才能が彼にあるのか。

最終的に「写真甲子園」で優勝することになる沖縄チームは本選では殆ど出番はありません。結局、何が良くて優勝したのかも不明。

大阪チームの地区予選で使ったスナップ写真が無許可で撮ったものだとクレームが入り、顧問が責任を取って学校をやめるというエピソードも意味不明。作中では撮影前に相手に許可を取っているので、クレームには学校側がしっかり対処すべき案件。

本選では黙々と高校生たちが写真を撮っているシーンを映像にしても映画にはならないので、無理やりトラブルを発生させる。さらに、椅子を製作する職人(千葉真一)が語る謎の女子高生(平祐奈)の話は東京チームに何らかの影響を与えるのかと思えば、特になし。

極めつけは大阪チームのリーダー(本作品のもう一人の主役)が川でSDカード紛失するシーンがあまりにも酷い。その後、転んで怪我をしてバスに乗り遅れ、血を流しながらバスを追いかけるシーン。別行動していた残りの2人もバスにリーダーが乗っていないため、自分たちもバスに乗らず、「写真甲子園」の会場まで3人で走ることになる。

しかし、大阪チームはSDカードの提出時間に間に合わず最終日の撮影分は無かったことになる。ここで「あれ?レギュレーションっておかしくないか?」と観ていて思うわけです。3日間とも与えられているテーマが違うため、そのテーマに合う写真を各々撮ります。3日間それぞれ撮った日の分のSDカードを大会委員に提出して、その中からその日のプレゼンで使う写真を選ぶわけです。よって、大阪チームはSDカードを時間内に提出できなかった時点で失格のはずです。ところが顧問から「君たちには2日間で撮ったものがあるではないか」と言われ、最終プレゼンに挑みます。

審査委員長の立木義浩氏が高校生たちが撮った写真にコメントするシーンは、妙にドキュメンタリーぽいです。実際の「写真甲子園」の本選の緊張感もあのような感じなのかなと伝わってきます。

約2時間の映画ですが、良い部分は本選のプレゼンシーンくらいです。あとは無理やりドラマにしようとして、ストーリー構成を煮詰めずに作ってしまったというやっつけ仕事全開です。

エンディングで使われている歴代の「写真甲子園」に参加者たちの写真を見せられると、なんでドキュメンタリー番組にしなかったんだろうと余計に感じます。

NHKが気合を入れて「写真甲子園」のドキュメンタリー番組を作ったらどうなるんだろうと思うばかりです。



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