何もしない贅沢「船旅」北海道編

今年のお盆休みはパナモリORC16で中部地区を一周しようかと考えていましたが、諏訪湖の花火祭りの影響で都合が良い場所の宿をとることができず断念しました。パナモリORC16を旅仕様に仕上げる過程で近場を何度か走った時、目眩がするほどの暑さで心身共に疲労困憊になったことで、諏訪湖を回避するルートを考えることすらやめました。

年中無休の会社ですから「お盆休み」そのものはありません。どこで夏休みを取るのか各自が決めるだけですから、世間のお盆休みの翌週に夏休みを取ることに変更。しかし、8月後半でも暑いことには変わらず、標高が高いところだけ走るという都合が良いコースを作ることも困難です。

「やはり夏は北海道でしょ」と思うも、今さらフライトの確保は難しく、仮に空席があっても高額になります。何か良いネタは無いものかと悩む日々。

たまたま録画しておいた「マツコの知らない世界」の「豪華客船の世界」を観て「これだ!!」と閃いたわけです。「豪華客船」ではありませんがフェリーで愛知から北海道へ行くことができます。難点は片道で40時間も掛かることです。現地での滞在時間を考慮して、フェリーの空席状況をチェック。もちろん大部屋の雑魚寝は避けたい。

プライベート空間を確保されたS寝台を往復とも予約できたため、まずは「夏休み」が確定。

独り寂しくレンタカーで観光する気にはならないため、ブロンプトンを持っていきます。走行ルートは日本一周で走っていない区間ですので、「洞爺湖~苫小牧」になります。プラスαでどこを組み込むかとなりますが、あくまでも天候次第です。

7日以上の連休を取る場合は特別な申請が必要になるため、今回も6.5連休です。フェリーの出港時刻が19時ですから、午後半休で行けることも都合が良いです。

まずは船旅編です。

8月22日

午後4時ごろに家族に新安城駅まで送ってもらい、まずは名鉄で名古屋駅まで移動します。太平洋フェリーの乗り場まで行く直通バスに乗りますが、このバスはフェリーの出港時刻に合わせて1日1本しか出ていません。仮に満席の場合は他の交通手段に切り替える必要があるため、早めにバスの乗車券を買っておきます。他の方法はややこしいため割愛します。

定刻の17時20分、直通バスは発車しましたが、私のようにお盆時期を外して北海道に行く人が多いのかバスは満席です。


全長が約200mあるため、ここからでは全景を撮ることはできません。これだけ大きければ「揺れて船酔い」ということは無さそうです。


こちらがフェリー「新いしかり」のS寝台です。相部屋ですがプライバシーが確保されています。


このようにテレビが設置されています。BSデジタル放送と船内放送も映るため暇つぶしに困らないかもしれません。テレビの上に荷物を置くスペースがあります。廊下にもロッカーがあるため、大部屋のように「荷物を置く場所があまりない」ということはありません。


船内でくつろぐための服装に着替えたら船内を散策します。


売店や軽食コーナーもありますが、営業時間が限られているためチェックしておく必要があります。残念ながら売店には「食事」になるようなものはありません。あるのは「おつまみ」程度のものです。軽食コーナーも選択肢が非常に限られるため、必然的にレストランを利用することになりますが、こちらは「バイキング」しかありません。料金が少し高めですので3食ともレストランを利用していては大変なことになります。


船内を一通りチェックした後は外の景色を眺めますが、絵画のような夕暮れの景色に少しばかり圧倒されます。


反対側も「なんじゃこりゃ!」という感じです。


フェリーの速度は遅いため出港から30分以上たっても名古屋港の夜景を眺めることができます。一般道を走る車と大差ないため、北海道まで40時間も掛かるわけですね。

散歩のあとは風呂に入ってのんびりします。


豪華客船のような派手なイベントはありませんが、太平洋フェリーにもショータイムがあります。出演者は往復とも同じフェリーに乗船しているため、火曜日の夜から土曜日の昼間まで拘束されるというわけです。


テノール歌手の毛利さん


ピアニストの山口さん

楽しいひと時を過ごすことができます。

8月23日


食費をなるべく抑える作戦としては朝食バイキングで「2食分食べる」です。フェリーの中で運動するわけではないため、昼食無しでいけるはずです。しかしながら、胃袋の限界に挑戦するほどの種類は無く、売店が開いてから「つまみ」をいくつか確保しておきます。なお、レストランの営業時間の前から並んだ場合は席の確保ができますが、少しでも出遅れた場合は席が空くまで30分待たされることになります。


食事以外にすることは、散歩、読書、風呂のサイクルです。


16時30分ごろに仙台港に到着。意外にも仙台で降りる人たちが多いようです。わざわざ40時間も掛けて愛知から北海道に行く人たちというのは「時間がたっぷりあるシニアや学生」「子供が小さい家族」かもしれません。

仙台港の停泊時間は名古屋港起点で往路が「16時40分~19時40分」、復路が「10時~12時50分」となっているため、自家用車を利用している人たちは2時間ほど上陸できます。自転車だと移動しているだけで時間切れになってしまうため、グルメタイムを作ることができません。

ということで、船内に残っている人数は半分くらいでしょうか。

8月24日


太平洋を進むフェリーなら朝日を楽しむことができるはず…。5時起きしたのに少しのんびりしていたら既に太陽が昇っていて残念。


北海道に上陸する日の朝食バイキングこそは2食分食べておく必要があるため、胃袋が「もう無理」となるまで詰め込んでおきます。


ピアノの生演奏を聴きながらのんびり過ごします。


ようやく北海道に上陸。

「ブロンプトンで日本一周」で八戸から苫小牧までフェリー移動しましたが、その時は「寝ている間に北海道へ」でしたが、名古屋から苫小牧までは「船の中で過ごす」ことを楽しむ必要があります。往路はこれで終わりです。

引き続き復路です。

8月26日


思いの他いろいろあったサイクリングを終えて16時ごろに苫小牧港に戻ってきました。


往路の反省から乗船前に夕食をとっておきます。

実は食料の持ち込みは禁止されていると思っていたのですが、船内で弁当とかカップ麺を食べている人たちが結構いたので持ち込みOKなのでしょうか。


サイクリングの最終日は支笏湖まで上るコースを選択したため汗だく&疲労困憊です。乗船後、即行で風呂に入って疲れを取ります。少し落ち着いてから船内を探索しますが、往路の「新いしかり」と復路の「きそ」では船内が少し違います。


一通り探索した後はデッキに出て夕暮れ時の景色に思いを巡らせます。目の前のフェリーは茨城の大洗に向かうようです。あれに乗船すれば気分は「ガルパン」でしょうか。


ソプラノ歌手の桜谷さん


ピアニストの平山さん

8月27日


今日こそは日の出を見るぞと気合を入れて30分前からスタンバイしますが、残ながら水平線に太陽が現れません。「日の出を待ちわびる若者たち」も絵になるのでこれはこれで良しとします。


「きそ」の朝食バイキングは品数が少なくてちょっとガッカリです。これなら明日の朝はパスかな。その代わりに朝食になりそうなものを確保しておく必要がありますが、それが難題だったりします。


太平洋フェリーの船内で映画が上映されます。S寝台のようにテレビ付きの個室なら三択ですが、小さいテレビで映画を観ても楽しくないので、スクリーンがあるラウンジに向かいます。午後1時は「アニメ」、午後4時は「邦画」、午後10時は「洋画」になっているためバランスを考えての構成でしょうか。


夕食時になると軽食コーナーにも長蛇の列ができるため、営業時間開始まえにレジ前に並んでおきます。受付ナンバー“3”でしたので、すぐに食べることができましたが、数分の出遅れが大変なことになります。とにかくオンシーズンにフェリーを利用する場合は「食事」が一番の課題になります。


食後は再び風呂&散歩です。本日だけで3度目の風呂ですが、食事、散歩、風呂、映画、読書、ときどきテレビのサイクルで「暇を持て余すだろう」と思えた船旅でも快適に過ごすことができます。特に何かするというわけでもないため、普通の旅行と比べたら「何もしない」と同じレベルですが、これこそが「何もしない贅沢」というものです。「自宅でくつろぐのと同じだけど、北海道から愛知に移動している」そんな感じです。


二晩目もショータイムがあります。衣装が赤に変わっていて、楽曲もトークも一晩目とは違います。半分お笑いショーみたいな雰囲気ですので、あっという間に時間が過ぎます。

8月28日


船旅最終日こそは日の出を見たい。ですが、雲の向こうに太陽が昇ってきているのが分かります。皆さん結構粘っていましたが、諦めて一人減り二人減りとデッキから姿を消し、残ったのは私のみ。


粘った甲斐あって、こんな景色を見ることができました。なかなかのものです。


ようやく愛知に戻ってきました。伊良湖岬のすぐ近くを通るため、この方角から伊良湖岬を眺めることができるのは、この太平洋フェリーに乗った時だけです。


名港トリトンの二本の赤い橋をくぐる時は、乗船客たちのテンションマックスです。それと同時に船旅も終わりを告げます。


大学3年の時、「舞鶴港~小樽港」のフェリーを使ったことがありましたが、当時は退屈過ぎて苦痛すら感じました。しかし、今回の船旅では「退屈」と感じたことは一度もありませんでした。「何もしない贅沢」を楽しむには、ある程度の年齢が必要なのかもしれません。

ということで選択肢としての「船旅」は有りですが、毎日が日曜日のシニアさんたちを除けば誰しも時間の制約があります。短い休みでも「船旅」を楽しみたいのなら、フェリーで苫小牧まで行き、登別温泉で宿泊、復路は飛行機が良いかもしれません。これなら、木曜日の夕方に出発で日曜日に帰宅できます。

例えば…
名古屋港→苫小牧港 太平洋フェリー
苫小牧港→苫小牧駅 バス
苫小牧駅→登別駅 JR特急
登別駅→登別温泉 バス
登別温泉→新千歳空港 直通バス
新千歳空港→セントレア ANA or JAL


数日前から最終日の天気予報が「雨」になっていましたが、曇り空とはいえ雨が降り出す気配が全くないため自走で自宅へ向かいます。公共交通期間を使うと待ち時間を含めて2時間ほど掛かるため、自走でも大して所要時間は変わりません。

汗だくになりながら、フェリー乗り場から2時間ほどで帰宅。

以上で「船旅編」は終わりです。



関連エントリー