分割で「日本一周」を進める場合の最大の問題点は往復の交通手段です。特に北海道と九州の場合は「空港」を使うため、日程との兼ね合いもあってすんなりと行程が決まることはありません。広すぎる北海道の場合は「ひたすら頑張って走る」または「ばっさりカットする」の二択を迫られることもあります。
「ブロンプトンで日本一周」を50歳までに完了させることも目安にしていたため、終盤の2年間は少し無理をしましたが、とりあえず50歳になる前に日本一周を完了させました。その後は、新しいネタを投入しながらも都合上カットした区間を補完していくのがブロンプトンの旅の第二章であります。
あくまでも結果論ですが、50歳になった翌年の春の八重山諸島巡りの後に諸事情が続き、約2年間も「ブロンプトンの旅」を自粛していました。仮に日本一周を完了させずに2年間も自粛期間があったとしたら、ストレスに耐えられなかったかもしれません。
前振りが長くなりましたが、今回の「船旅+サイクリング」で走る区間は「日本一周」の時にカットした「洞爺湖~苫小牧」になります。この区間を単純に走るだけなら一日あれば終わってしまいます。日本一周の時のように「ひたすら走る+少しだけ観光」なら、2.5日間フルに使って「苫小牧~支笏湖~札幌~洞爺湖~室蘭(地球岬)~苫小牧」も可能です。とりあえず、そのつもりで宿を確保しましたが、食事なしの安宿に泊まって早朝から夕方まで走るのは「もういいか」という気分です。どうせなら、観光も楽しみ、温泉宿でのんびりしたいものです。
補完計画としては「洞爺湖~苫小牧」の区間を走れば目的は達成されるため、いかに「のんびりポイント」を設定するかとなります。夏場は天候が不安定なこともあるため、雨が降った場合の代替案も必要。日本一周の時は何があっても走りましたが、補完計画では雨の中を無理に走る必要はありません。
ということで、現地の天候次第でリカバリーできるようなプランニング。
8月24日
11時20分、雨上がりの苫小牧港をスタート。
晴れの場合のプランは「苫小牧港→千歳市→支笏湖→苫小牧駅」でしたが、支笏湖に行くのなら晴天日がベストです。雨が降るのかどうか微妙な天候で無理して行くことはありません。支笏湖を候補に挙げた理由は、北海道の自転車道をいろいろと走ってきたので、その一環で「千歳~支笏湖」「支笏湖~苫小牧」それぞれの自転車道を走ってみたかったからです。
雨の場合のプランは苫小牧港から苫小牧駅までバスで移動、苫小牧駅から洞爺駅までJRの特急で移動、そして洞爺駅から洞爺湖温泉までバスで移動。午後3時ころには温泉に入ってのんびり。
雨が降るのかどうか微妙な場合は、苫小牧港から登別駅まで自走。途中の白老で観光をしておけば、最終日に登別駅から苫小牧駅までJRで移動してから「苫小牧駅→千歳市→支笏湖→苫小牧駅→苫小牧港」を走ることができます。
登別駅に辿りつく前に本降りになった場合は、最寄駅から洞爺駅までワープすれば良いのでとりあえずは気楽です。
日本一周の時に「洞爺湖~苫小牧」をカットした理由は日程的なこともありますが、実は北海道らしくない交通量の多さにあります。特に室蘭周辺は昔から変わらず大型車の往来が多いため、自転車で走っても楽しくないのです。まあそれでも実際に走ってみなければどうなのかですが、予想通り大型車の往来が多く、すれすれで追い抜くということは皆無とはいえ、走っても面白くありません。
牧場の馬は好奇心旺盛で、馬を眺めていると必ず近づいてきます。
「登別~苫小牧」の区間にある唯一の観光ポイントは「アイヌ民族博物館(ポロトコタン)」です。雨に降られることなくここまではやってきましたが、入場した途端に小雨状態。
ソフトバンクの「お父さん(カイくん)」の娘「ゆめ」です。平成22年6月生まれだそうです。今まで勘違いしていましたが、カイくんは北海道犬です。
白老ポロトコタン
「ポロト=大きい湖、コタン=集落」という意味であることは古式舞踊公演の時に教えてくれます。北海道には読むのが難しい地名が多くありますが、アイム語が元になっているからだそうです。実際に現地を旅してみないと読み方を知ることが無いかもしれません。
アイヌ古式舞踊公演では、最初にアイヌの人々の生活や、風習、行事などについての説明があり、そしてアイヌの楽器ムックリ(口琴)やトンコリ(五弦琴)、イオマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)など披露してくれます。
時間にして約25分ですが、あっという間に時間が過ぎます。公演時刻より随分早く入場すると、アイヌの(年配の)お姉さんと記念写真を撮ってくれます。
「アイヌ民族博物館」には1時間15分滞在していました。その間に雨は止んだため、もう少し自走で進みます。
屋根の上の巨大なクマが目印の「かに御殿」。お腹が空いていればここで食事タイムとなりますが、フェリーの朝食バイキングで2食分食べておいたので写真だけ撮って先に進みます。
「天気が崩れる日は東の風」は定番ですので、西に向かって走っても追い風アシストです。順調に進み過ぎてゴールの登別駅がすぐそこです。駅で30分以上も待つのは退屈ですので、少し寄り道。ところが、寄り道は舗装されておらず、ひたすら押し歩きになります。
「アヨロ海岸」という場所ですが、海沿いを歩くことができるのかイマイチ分かりません。
とりあえず灯台にむかう遊歩道(草むら)があったため上ってみましたが、途中の階段がロープでブロックされていて突破できず残念。
諦めて15時15分ごろ登別駅に到着。
選択肢としては…
15:37発→17:04着(1時間27分)1,070円
15:57発→16:36着(39分)2,200円
今からだと洞爺湖を一周する時間の余裕がないため急ぐ必要はありません。到着時刻が30分程度しか変わらないのなら1130円節約できる各駅停車にしますか。
ワンマン列車には慣れが必要ですが、乗り降りの駅がそれぞれ特急が停まるのなら普通の列車と同じです。時間は掛かりますがこれで洞爺駅までひと眠りできるはず。
ところが、駅に停まる度に乗客が増えていき、車内がどんどん騒がしくなります。乗ってくるのは女子高生ばかり。たまに男子高生もいる程度。この大勢の高校生たちは人口が多い室蘭まで行くのかなと思ったのですが…
洞爺駅に向かうために東室蘭で乗り換えます。洞爺行きのホームに移動してみると、なんと狭いホームが高校生たちで溢れています。乗ってきた列車よりも人数が多そうです。完全なるアウェー感に押しつぶされながら列車を待つこと十数分、ようやく2両編成のワンマン列車に乗り込みますが、車内は高校生たちの通学ラッシュ状態です。車両の端のドア付近から動くことができません。幸いにもワンマン運転中は駅に着いてもドアは開かないため荷物を置いても邪魔になりません。特急が停まる洞爺駅に着けは目の前のドアが開きスムーズに降りることができるはずです。洞爺駅まで我慢我慢ですが、すぐ隣の4人の女子高生が恋バナで盛り上がっていて、もう居場所に困るとはこのことです。
教訓、特急列車が停まる駅なら特急を使いましょう。
雨は降っていないため、サミット開催記念碑で記念写真を撮ってから洞爺駅から洞爺湖温泉まで自走します。
ブロンプトンで2度目の訪問になる洞爺湖に到着です。宿の予約時に到着時刻を19時にしたため、食事時間は19時以降になります。通常は18時からのようで、つまり18時から19時は温泉がほぼ貸し切り状態になって、のんびりと温泉を楽しむことができました。
洞爺湖温泉のホテルの夕食は豪華なバイキングです。最後の最後にカニとホタテが置かれていて「うわっ!」となったことは、テーブルから溢れそうになっている料理を見れば分かるかもしれません。久しぶりの「胃袋の限界に挑戦」状態になってしまい、デザートに突入どころか残念ながら完食できません。食後にも温泉に入る予定が、部屋に戻ってベッドに倒れました。3年前ならもっと食べることができたはずなのに、2年間の遠征自粛で胃袋が小さくなったのでしょうか。
洞爺湖ロングラン花火大会が2017年4月28日から10月31日の日程で毎日開催されていますが、日暮れ時刻辺りから本降り状態です。雨の中を湖畔まで見に行って花火が中止では面白くないため、テレビを見ながらくつろいでいると、20時45分過ぎから「ドーンッドーンッ」と大きな音が聞こえだしました。慌てて部屋から出ると同じように飛び出してくる宿泊客がちらほら。中止と決めつけていたので館内から花火を見ることができる場所は既に埋まっています。
さて、どうしたものか。そういえば最上階に何かあったはず。急いで階段を上ります。
電気がついていない最上階をうろうろして、湖側に何か部屋らしきものを発見。そーと、ドアを開けて見ると会議室らしき部屋で、ちょうど花火が目の前であがっています。
雨が降る中をベランダに出てとりあえず適当にカシャカシャ。
8月25日
胃袋の限界まで食べても朝までには全て消化されたようで、気分よく5時ごろに起床。さっそく早朝の温泉に入りましたが、何度も温泉に入るのは日本人だけのようです。
以前のように「とにかくたくさん食べたい」という欲求は無いため“バイキング”に拘るつもりはありませんが、観光客が大勢宿泊するホテルは必然的に“朝食バイキング”が定番です。夕食とは違って常識の範疇の品数です。普通の観光旅行ならこれだけで十分すぎますが…
今日は自転車で走り回るため「2食分」食べておく必要があります。胃もたれを起こさないようにパンを追加してカロリーを補給しておきます。
急ぐ必要はないため、8時15分ごろに宿を出発。今日の天候だけは1週間前からの予報で「晴れ」になっていましたが、予報通りに昨夜の雨が嘘のように晴れ間が出ています。景色を眺めながら洞爺湖周回道路を気持ちよく走り続けます。
洞爺湖八景「浮見堂」を眺めながら小休憩。
周回道路は途中から「大型車通行禁止」のルートを選択できます。もちろんこちらが自転車向きのルートであるわけですので、景色を眺めながら気持ちよく走ることができます。
洞爺湖周回道路は約36kmありました。所要時間は2時間弱。“消化ゲーム”なら無理にでも昨日のうちに走ってしまうところですが、もうそのような旅を続ける必要はないため、「晴れ間に走りたい」と思った区間は晴れの日に走ります。そう思うようになれば、仮に雨ならバッサリとカットしてもいいわけで。
さて、室蘭の地球岬目指して走りますか。
昨日も通ったトンネルを走っていると嫌がらせのようにクラクションを鳴らして追い抜いていく黒いプリウス。北海道でクラクションを鳴らされることは殆ど無いため、余計に「なんなんだこいつ!」と思えてきます。
トンネルを通り抜けて次の交差点を左折すると、リアタイヤが妙な挙動を起こします。たいてい「!?」って感じた時はパンクです。
空気圧が下がっているためブロンプトンをひっくり返してタイヤをチェックすると、なんと豆粒大の石がタイヤに刺さっています。黒いプリウスに嫌がらせを受けた時に道路の左端ギリギリまで寄ったことで、石を踏んだ可能性が高いです。ほんと腹が立ちます。
ホイールを外してチューブ交換するのは時間が掛かるため、ママチャリのパンク修理のようにホイールを外さずにチューブを取り出してパンクの程度を確認します。酷ければ改めてホイールを外すことになりますが、イージーパッチでなんとかいけそうです。問題は石がタイヤを貫通していることです。つまりタイヤにも穴が開いているわけですが、タイヤにもイージーパッチを貼って様子を見ます。もし走行に支障があれば、予備のタイヤと交換します。※ブロンプトンで旅をする場合は「予備タイヤ」が必須です
ここでテンションがいっきに落ちましたが後編に続きます。