自転車でたくさん走ることに飽きた2015年の秋から始めた「歩き旅」ですが、愛知県から脱出することなく中断しています。当初の予定ではそろそろ東海道くらいは完了していたはずですが、20km程度歩くと疲労困憊になることと、思うように先に進まないため精神的にも疲れ「今日はもういいか」となり、なかなか計画が進みません。「20km程度普通に歩けるようになったら…」という漠然とした目標みたいなものを抱き、もしそうなれば「40kmウォーキング」とか「20kmトレッキング」も可能です。
中断した「歩き旅」の代わりに自宅周辺を何度か20kmほど歩いてみて、体力的には問題ないところまで辿りつきました。これなら「20kmトレッキング」もターゲットになり、「いつかは」と思い描いていた「縄文杉トレッキング」と「尾瀬ハイキング」が現実的になってきました。
中途半端になってしまった2012年の屋久島サイクリングから帰宅してからは「屋久島に再び訪れるなら縄文杉トレッキングとセットにしよう」という思いが常にあり、この半年間ほどは「自転車に乗る代わりにひたすら歩く」を続けたことで歩くための筋力もついてきました。ならば再び屋久島へ!
ということで「屋久島サイクリング」と「縄文杉トレッキング」の2本立てで屋久島にやってきました。
ここからは「縄文杉トレッキング」編です。
→「屋久島サイクリング」編はこちら
2018年4月5日
前日に下見を兼ねてブロンプトンで屋久杉自然館までの急坂を上ってみました。気合と根性があっても荒川登山口までは荒川登山バスを必ず使うしかないため、麓の港町から屋久杉自然館までの短い区間を自走するのか、または路線バスを使うのか。以前の私なら「もちろんブロンプトンで!」となるところですが、今回は同行者H君がいることと「無駄な頑張りはいらない」と思うようになっていることもあり、路線バスを使います。実はギリギリまで自走を予定していました。それは、荒川登山バスに乗り換えるための路線バスの本数が少なすぎるのです。4時台に1本、5時台に1本しかありません。仮に乗客が多すぎて5時台のバスに乗ることができなければ、「縄文杉トレッキング」そのものができなくなります。
万が一に備えて4時台のバスに乗ることにして当日は3時起きです。
朝食と昼食をどうするのか。という問題もあります。私は宿の近くにある雑貨やぽい店で菓子パンを大量に買いました。コンビニくらいあるだろうという目論見は外れてコンビニはありません。「縄文杉トレッキング」の人たちの食事の確保はどうするのか。これの回答は「弁当や」です。前日の夜8時までに注文すると翌朝の早い時間帯に受け取ることができます。4時30分、H君は無事弁当を受け取ることができましたが、「ちょっと待って」と思わず私が突っ込んだほどの量が少ない弁当です。「ちょっとその辺をハイキングして弁当を食べようか」程度の弁当です。私は「5個入りアンパン」と「6個入りハチミツパン」を携帯しています。自転車のロングライドのように小休憩ごとに少しずつ食べていく作戦です。小さい弁当1個のH君は最後までエネルギーが持つのであろうが。単なるカロリー補給が目的なら“高カロリーでも重量は軽い”菓子パンは最強です。
4時台の路線バスに乗って屋久杉自然館へ向かうと「バスは速いなぁ」とつくづく感じさせられます。当たり前ですが押し歩いた区間もさくさくとバスは上っていきます。さて、第一関門を突破しても荒川登山バスに乗り換えるという第二関門があります。定員オーバーで乗車できなければ1本後のバスになってしまいます。幸いにも予定していた時刻の荒川登山バスに乗車でき、まだ暗い中をバスは進みますが、バスが走るには狭すぎる山道を見事な運転テクニックに驚くばかりです。普通の観光バスの運転者ではこの山道をスムーズに進むことは難しいかもしれません。乗用車でも狭すぎ、自転車にちょうど良さそうな道幅ですが、勾配が厳しいので、上り切ったあとにトレッキングをする体力が残ってなさそうです。
さて、荒川登山口から縄文杉までの往復コースの所要時間の目安は多めにみて10時間となっているため、屋久杉自然館と荒川登山口を結ぶ荒川登山バスの運行時刻もそれに合わせてあります。時刻表を見る限り、早い便で行き遅い便で帰ってくるようにスケジュールを組めば、所要時間は12時間まで伸ばすことができます。今日は5時の荒川登山バスに乗車できたので、6時ごろにトレッキングをスタートして、16時ゴールなら標準的なタイムとなります。
5時40分ごろに荒川登山口に到着して、まずはトイレを済ませます。気合が入った人たちは軽くストレッチをしてからヘッドライトを頼りに暗い中を突き進んでいきます。時間はたっぷりあるため急ぐ必要はありません。ライトが不必要になるまで、少しだけ待ってからスタート。
序盤から大自然を感じさせられる風景のオンパレードですが…
このような橋を渡るため景色に気を取られ過ぎると危険です。
苔の厚みが全く違います。いったい何年経てばこのような苔になるのでしょうか。
屋久島でなければ、すぐにでも何かしらの命名がされそうな杉があちこちにあります。
小杉谷小中学校の校庭
トロッコのレール跡に沿って山の奥へ奥へと歩き続けますが、このレールを再利用してトロッコ自転車を運用したら楽しいだろうなと思えてきました。しかし、観光地化させては世界遺産の認定が取り消されてしまいますね。この時点ではトレッキングというよりはハイキングという感じです。
雨宿りできそうな杉です。
「そろそろ休憩がしたい」というタイミングで休憩ポイントが現れました。前半の途中の休憩ポイントと大株歩道入り口の休憩ポイントで補水が可能ですので、大量に水を運搬する必要はありません。私はペットボトルを3本も携帯していたため、結構重かったです。休憩ポイントで必ず補水することを忘れなければペットボトルは2本で十分です。※夏場は分かりません
三代杉
初代が倒れ、その上に育った二代目も倒れ、三代目になって数百年。初代から数えると三千数百年もこの地で育つ屋久杉。
ゴソゴソと音がするので見上げると、すぐ近くでヤクシカが食事中。
「屋久島では,月に35日雨が降る」と書かれた小説があるように地形的に雨が降ることが多い屋久島ですが、今日はドピカン晴れです。しかし、昨日も目撃しましたが、島の中央付近が雨雲に突然覆われることがあるため油断できません。
ひたすらマイペースを貫いたこともあって疲労感もなく「大株歩道入り口」に到着しました。ここまでの所要時間は休憩込みで2時間45分でした。
縄文杉トレッキングの予習をしてしまうと現地での新鮮味が薄れてしまうため、ざっくりとした区間タイムのみチェックしておきましたが、現地で感じたことは「ガイドブックに書かれているのは誰でもこれで余裕というタイムスケジュールじゃない!」です。
数多くあるガイドページから比較的分かりやすい地図をお借りします。
荒川登山口
↓ (2時間20分)
大株歩道入り口
↓ (1時間50分)
縄文杉
↓ (1時間35分)
大株歩道入り口
↓ (2時間15分)
荒川登山口
計 8時間+休憩時間
スタートして「大株歩道入り口」までに休憩を1回として2時間30分が目安になりますが、これを目安にしている人が多いのか、私たちよりペースが早い人ばかりです。抜かれるばかりで抜くことがありません。私たちは参考タイムより15分遅れですが、焦る必要は無く、ゆっくりとカロリーを補給します。
後半の区間は「これぞ秘境!」という感じの領域に突入することになります。前半のような気軽なハイキングとは全く違う本格的なトレッキングです。昨日の屋久島サイクリングで「上る筋肉」を酷使したため、道なき道を登るための筋肉が悲鳴をあげます。
ウィルソン株の中にある祠
少し時間を掛けて角度を探せば見つかるはずの「ハート」ですが残念な結果に。
さくさくと登り続けるH君に対して私の太ももは限界に近い。「大王杉」を眺めながら小休憩。
そしてついに「縄文杉」とご対面。疲れが吹っ飛ぶ瞬間です。後半の区間タイムが休憩込みで1時間40分。筋力勝負になってしまう後半は結構良いペースだったようです。
写真では伝わらなくて残念ですが、「縄文杉」は非常に大きいです。まさにラスボス感が漂う佇まいです。
保護のため近づくことができませんが、個人的には「キング オブ パワースポット」です。
さて、天気がどうなるのか分からないため、さっさとUターンします。それにしても屋久島じゃなければ、1本だけでも有名な観光名所になったり、ご神木になったりしそうな杉があちこちにあります。
雨なら悲惨なことになりそうなトレッキングコースです。
復路も3回ほど小休憩を取りましたが、往路に比べると遥かに早いペースで歩き続けます。往復コースの場合の復路は入ってくる情報量が少ないため“無”になりやすく、“ひたすら走る”とか“ひたすら歩く”には適しています。往路は全てが初ですので情報処理に忙しいです。
しかし、気分転換は必要です。この花の品種は何だろう。
今日は屋久島では珍しく風もなく穏やかな一日です。
自転車のロングライドと同じで「前半は無理せずのんびり進めて、全ての休憩は短めにして、後半はゴール目指してハイペース」にすることに決めていたため、他の人のペースに惑わされることなく、終始マイペースでいけました。シーズンの谷間ということもあってか、縄文杉までの往復トレッキングをする人が少なかったことも幸いしました。そして何よりも雨に降られなかったが大きいです。
元気よく荒川登山口に戻ってきました。所要時間は8時間35分 (休憩6回含む)でした。
踵側の衝撃を少しでも和らげてくれる効果を期待して「round sports かかとカバー」を使いました。
そして、「これのお陰で疲労困憊にならずに済んだ」というアイテムが「高級カーボン製 超軽量 トレッキングポール 折りたたみ PIONEER」です。送料込みで8560円しましたが十分に元が取れたと思います。
1本で198gという軽さです。似たような製品でブランド力があるメーカー品だと15000円を超えるため、このノーブランド品はお得です。
早く帰る人は想定していないのか復路の荒川登山バスの1本目は午後3時ですが、路線バスへの乗り継ぎも無駄がないようで、午後4時前には宿に戻りました。
身体が妙に塩分を欲しがったため、夕食には「ちゃんぽん」をいただきます。
そして「トビウオの姿揚げ」です。これを見るとトビウオがどのような魚なのかよく分かりますね。
以上が、一生のうちに一度はやっておきたい「縄文杉トレッキング」でした。