猿と鹿の楽園「屋久島」でヒルクライム

2012年9月14日~15日

九州遠征第五弾「屋久島&鹿児島」の初日は屋久島の白谷雲水峡でヒルクライム&トレッキング、2日目は台風が迫ってきているため天候の状況を見ながら観光サイクリングを楽しみます。


201209九州遠征 1日目 「屋久島(1)」
201209九州遠征 2日目 「屋久島(2)」

遠征初日

九州遠征第五弾の当初の予定では第三弾の続きで次のようなルートを走ることにしていました。

鹿児島中央→吹上浜→知覧→指宿(宿泊)~フェリー~根占→佐多岬→根占~フェリー~指宿

走行ルートとしては1泊2日あれば完了ですので、3日目は指宿でのんびり過ごすのも良いかな考えましたが、飛行機を使って鹿児島まで行き「2泊3日」で返ってくるというのは“もったいない”気がします。あれこれとオプションを検討していた時、大阪のサイクリストであるイヨッキュさんが「屋久島」に行かれることを知り、ならば「イヨッキュさんと屋久島サイクリングを楽しもう」という大きなオプションを追加。

しかし、鹿児島遠征に屋久島を絡めるとなると屋久島へ渡る方法と日程に難あり。そして、あくまでもサイクリングが目的ですので、今回は屋久島観光の定番「縄文杉トレッキング」は無し。あれこれシミュレーションをした結果、鹿児島から屋久島への移動は往復ともJALを使い、屋久島で2泊することで決定。

屋久島滞在の3日間のスケジュールとしては「1日目 空港→白谷雲水峡(ヒルクライム&トレッキング)→永田の宿」、「2日目 永田の宿→反時計回り(立ち寄りポイント数箇所)→安房の宿」、「3日目 安房の宿→ヤクスギランド(ヒルクライム&トレッキング)→空港」。そして鹿児島空港から空港バスで鹿児島中央まで移動して宿泊。

このような完璧なスケジュールを立てたのですが、なんと遠征直前に台風が発生…

通常なら7月の遠征の時のようなスケジュールを大きく変更するところですが、今回の鹿児島遠征は往復とも飛行機を使うことが足かせになり微調整程度の変更しかできません。今回の遠征の目的は「佐多岬」ですので、ここだけは死守させる必要があります。

悪天候になるとフェリーが運休になる確率が非常に高いため「指宿~根占」の移動が不可能になり、佐多岬へ行くことができなくなります。そこで「鹿児島中央→吹上浜→知覧→指宿(宿泊)~フェリー~根占→佐多岬→根占~フェリー~指宿」の案をリセットして、「志布志→根占→佐多岬→根占→鹿屋」に変更。自走ならは暴風雨の中でも頑張ればなんとかなります。

次なる問題点は、屋久島へ渡る手段も飛行機となっているため、殆ど返金されないことを覚悟で全てキャンセルするか、台風の動向を見ながら現地で何かしらの決断をするかとなり、「旅を続けていけば、こんなこともあるさ」と自分を試すためにも強行。

というわけで前振りが長くなりましたが、家族の心配をよそに屋久島目指して出発。


早起きだったため鹿児島空港で少し早めの昼食タイム。ここで食べておけば屋久島で時間をそれだけ使えます。鹿児島といえば「黒豚」というのが最近の定番らしいので、「黒豚うどん(861円)」をいただきました。


「鹿児島空港~屋久島空港」の機体はプロペラ機です。台風が本当に近づいているのか疑いたくなるくらいの晴天日。ところでこのプロペラ機は、席の頭上の荷物置き場が狭いため、ブロンプトンのCバッグがギリギリ入るか入らないか。バックポケットを空っぽにして少し厚みを減らしておいたので、なんとか収納できましたが、荷物が多目の季節だと機内持ち込みは難しいかもしれません。


鹿児島空港から屋久島へ向う機内から、遠征最終日を走る佐多岬を上空から眺めることができましたが、見るからに山岳コースになっています。ブロンプトンで大丈夫だろうかと少し不安になってきます。


名鉄本線→名鉄常滑線→ANA→JALと乗り継いでやってきました「屋久島」。鹿児島から屋久島へ向かう飛行機の乗客は比較的“若い”人が多いというのは、やはり連休前の平日だからでしょうか。普通の会社員では3連休に合わせて往復とも移動となるのかもしれません。他の空港とは違って、バカンス気分の若者が多いようで、屋久島空港はテンションが高めの人で大賑わいという雰囲気。


屋久島空港をバックに記念写真。


夕方の5時後には宿に入りたいため、白谷雲水峡を目指して先を急ぎますが、奇麗な海を眺めながら走るとついつい小休憩が多くなってしまいます。


「屋久島大社」に立ち寄って今回の遠征が上手くいくように祈願。


いたるところに咲いているハイビスカスを見ると「あ~ここは南国なんだなぁ」と感じます。


12時40分、白谷雲水峡ヒルクライムのスタート。標高差は約600mほどあります。ルートラボで見る限りはそれほど大変なコースだとは思えないのですが…


途中、鹿と遭遇。自転車が珍しいのか逃げもせずにじっとこちらを見ている鹿さん。


タイムは関係ないので、景色を見ながら小休憩を取りながら上っていきますが、荷物満載のブロンプトンでは途中で嫌になってくるほどキツイ上りがいつまでも続きます。


「空港から白谷雲水峡を上って下って2時間あれば(トレッキング除く)」という予想は非常に甘かったようで、14時頃にようやく到着。いやはや遠征初日から非常に疲れました。ここには自販機が無いことは知っていましたが、麓で購入したドリンクは既に空。駐車場係の人にダメ元で飲料水のことを聞いてみると…(こういうところには大抵はあるものです)


ありました。不老長寿の水「益救雲水」と書かれた命の水が。。。

ここは駐車場から随分と離れた場所にあるため、気が付かない人が大多数かもしれません。ガブガブと遠慮なくいただきました。これで少しは寿命が延びたでしょうか。


突然現れた小鹿。野生の小鹿なのに妙に毛並みが良いのがちょっと気になるけど、本来はそういうものなのでしょうか。

さて、水分補給が完了したところでトレッキング開始。しかし、随分とタイムロスしているため、最短コースくらいしか無理そうです。今回の遠征はサイクリングが目的ですから、トレッキングは雰囲気だけで十分と割り切ります。


しかし、最短コースで見ることができる景色なら、今までの遠征で立ち寄った“秘境”とあまり変わらないなというのが正直な感想。往復9時間ほど掛けて見にいく「縄文杉」なら感動するのかもしれませんね。


これが「弥生杉」。ということで、トレッキング気分を少しだけ味わったところで下山。


宮之浦港のところにある「世界自然遺産登録記念碑」。フェリーで屋久島にやってきた人の最初の記念写真スポットでもあります。

さて、本日の目的を果たしたので永田の宿を目指してえっちらおっちらと走ります。屋久島は平坦区間があまりなくアップダウンの連続で、まるで西伊豆のような雰囲気。すれ違った何人かのレンタサイクルの観光客が押し歩きしていたように、それなりに走り込んでいないとツライ思いをするかもしれません。私は「いつものことだから」と走り続けます。


夕方になると景色が変わり、これもまた良い感じです。何枚も写真を撮っていると私の名前を呼ばれたような…

大阪の剛脚サイクリストのイヨッキュさん登場。まさかレンタカーで現れるとは想像していなかったので一瞬戸惑ってしまいましたが、ほんと気さくな方で良かったです。私が下山したことを呟いたので、探しに来てくれたようですが、「布引の滝」に私が立ち寄っていたため、すれ違いになってしまったようです。宿まで僅かの距離ですから自走で行くことを告げていったんお別れ。


日本一のウミガメ産卵地「永田浜」に立ち寄ってみると、そろそろ日が沈む時間ですが、観光客が波と戯れていました。もう少し早い時間帯なら砂浜で昼寝でもすると気持ち良さそうです。たまには「波の音を聞きながら昼寝」というのんびりとした旅もしてみたいものです。

で、ようやく宿に到着?? あれ宿が見つからない。楽天トラベルの地図だと分からないし、ソニーのナビで電話番号検索してもヒットしない。これは困った。あるべき場所をウロウロしても民家しかないような。学校帰りの小学生に宿の場所を聞くと豆腐屋のところに看板があるらしいので、そちらにいくと「こちら」という看板あり。それに従っていくと「あれ?」元の道に出てしまった。うーん宿はどこなんだ。再び看板のところに戻りながら民家をチラッと見ると、なんとそこが民宿でした。これは分かりませんよ。建物が普通の民家ですから。

ちなみに屋久島ではソフトバンクが繋がらない場所が非常に多いです。アンテナが無いそうです。遠征の時は宿に到着時点で必ず家族宛にメールを送っているのですが、今日はそれができません。どこかに公衆電話は無いものかと再びウロウロしてみても見つからないため、宿の電話をお借りしました。遠征のたびに思い知らされる「ソフトバンクは繋がらない」という状況は相変わらず変わりません。ドコモは普通に繋がるのに。。。


待望の夕食タイムでは、イヨッキュさんたちとプチ宴会。豪華な食事と酒で夜が更けていくのでした。それにしても、台風が気になります…

遠征二日目

「台風が台風が…」とうなされたのか午前3時には目覚めてしまい、台風情報を改めてチェック。テレビの画面を何度も見ても「これってかなりヤバイのでは…」という状況。どうやら進路が少し変わり速度が少し速まっているようです。予想進路と予想通過時間からすると、私が乗る予定の鹿児島行きのフライトが欠航となる可能性大。はっきりいってドンピシャのタイミングとなるハズ。

飛行機が欠航すると「それでは、それ以降のフライトを確保」というわけにはいかないため、鹿児島に戻るどころか帰宅するのも非常に困難になります。本土ならば工夫のやりようはありますが、島の場合は「悪天候」が最大の敵です。困った。困った。。。

こうなると眠ることなどできません。しかし、ソフトバンクが使えないため、ネットで情報収集することも不可能。遠征前に調べた「鹿児島~屋久島」の移動手段の中から「これなら」という代替案を思いつくものの、具体的な発着場や発着時刻が分からない。飛行機を使う前提だったため、調査した時のメモを持ってきていない。6時頃になると朝食を準備をする物音が聞こえたため、宿の主人に「フェリー」の発着場所と時刻を教えてもらい、再びシミュレーション。高速船の場合は海が少しでも荒れると即座に「運休」になりますが、大型フェリーなら台風真っただ中という状況にならなければ「運行」の可能性は高い。しかし、飛行機よりも運休になるタイミングが早いのもフェリーというのは常識。

「明日の飛行機が予定通り飛ぶ」に賭けるのは博打そのもの。費用面については、事前にキャンセルすると自己都合のためキャンセル料を取られ、さらに返金額も半額程度。台風で欠航になった場合は全額返金されることは事前に調査済み。ここは金銭面よりは「社会人として確実に帰宅できること」を念頭に考えるべきですが。

飛行機が欠航するくらいの悪天候ならフェリーも運休となる。ならば、運行している可能性が高い今日のうちにフェリーで鹿児島に戻るのが正解。

ということで、午後1時30分に出港するフェリーに乗船することにして、本日の屋久島サイクリングのスケジュールを検討した結果、「屋久島灯台」に立ち寄った後、屋久島らしい雰囲気を楽しめる「西部林道」を走り、そして屋久島フルーツガーデンをゴール地点とすることで決定。

民宿らしい軽めの朝食を済ませて、午前8時30分ごろに屋久島サイクリングのスタート。本日は終始、Kさんがレンタカーでサポートしていただけるとのことで非常に助かります。重い遠征の荷物から解放されたブロンプトンを走らせると妙に変な気分。過去に身軽なブロンプトンを走らせたのはいつだったのか思い出せないくらい。お陰様で屋久島の急坂のアップダウンも激疲れすることなく快調に進められます。


青空いっぱいの「屋久島灯台」。本当に台風が近づいているのだろうかと思えるほどの晴天ですが、ふと振り向くと、そこにはどんよりとした雨雲が漂っています。180度向きが違うだけでここまで空模様が違うとは初体験。


晴れ男イヨッキュさんの後姿。間違いなく晴天が似合います。


屋久島サイクリングのメインイベントともいえる「西部林道」を走ると、噂通りに「猿」が道路を占拠しています。車が来てもなかなかどいてくれません。猿としてはここは自分たちの縄張りであり、人間が余所者という雰囲気なのでしょう。


人間が近づいても逃げる素振りをしないため、自転車を停めて、何枚も写真を撮っていると、母猿が突然怒り出し、しばらくすると貫禄があるボス猿が登場。いやはやこれはヤバイ雰囲気になってきましたよ。どう考えても襲ってきそう。慌ててブロンプトンに飛び乗って、走り出すがなんと運が悪くそこは急坂の途中。もう必死になって上るもボス猿が奇声をあげながら追いかけてきます。このままでは脹脛辺りを噛まれるのではないかという超接近戦。200mほど気合を入れて走らせると、縄張りから外れたのかボス猿は突然走るのをやめてUターン。きっと群れに戻ると「俺が退治してやったぞ」と自慢するんでしょう。お疲れ様。

冷や汗ものでしたが「猿に追いかけられる」という屋久島らしい体験ができたことも良き思い出となりました。


次に現れたのが「鹿」の団体さん。猿と違って近づくとすぐに逃げてしまうため、少し離れたところで様子を伺いながら撮影。


西部林道を走っていると「屋久島は猿と鹿の楽園だな」と感じるほど、猿や鹿に出逢いますが、この区間に関して言えば人間は余所者であると言えるかもしれません。


本日のサイクリングで立ち寄れる観光スポットは非常に限られるため「大川の滝」に寄ってみました。昨日の「布引の滝」とは違ってこちらは見ごたえがある滝ですね。ここで思い出アルバム用にイヨッキュさんと記念写真。


アップダウンというよりもアップアップアップという感じの西部林道を進み、下った感じはしないのに、いつの間にか海面近くまで標高が下がり、そろそろ屋久島フルーツガーデンかなというタイミングで雨がポツリポツリ。。。数分後には本降り状態というよりは本降り区間に突入。そこにタイミングよくKさん登場。急いでパッケージングしてレンタカーに退避。

偶然にも屋久島フルーツガーデンに向かう激坂道路の入り口だったため、いちおう本日のサイクリングは無事完走できたことになります。


屋久島フルーツガーデンではガイドさんの珍しい植物の説明を聞きながら園内をぐるっと散策します。珍しい植物ゆえによく分からないことばかりですが。。。


屋久島のいたるところにハイビスカスが咲いていますが、これは珍しい中央が黒い赤いハイビスカス。


屋久島フルーツガーデンの入園料は500円ですが、フルーツ盛り(試食セット)をいただくことができるのでお得感があります。


これはオプションですが「紫いもアイス果物付(300円)」も美味しくいただきました。

ここからはイヨッキュさんの運転で屋久島を半周しますが、まさに台風という感じの豪雨。ちょっとした場所の違いでここまで天候が違うとは「屋久島恐るべし」という雰囲気。ぐるっと回ると雨も小降りになり、食事処の「うふふカレー」に到着。


北インド風カレーの大盛り+ゆで玉子付きをチョイスしましたが、美味い美味いと食べ続けたのは途中まで、最後は辛さとの闘いに。。。


そして午後1時少し過ぎ、フェリー乗り場に到着。

イヨッキュさん、Kさん、ありがとうございました。最後までお世話になりっぱなしでした。三河に遊びにいらっしゃることがあれば、ご連絡くださいね。

二人に見送られる中、フェリーに乗りこむと、予定を変更して鹿児島に戻る人が多いのか、すでに船内は激混み状態。2等の大部屋のハズが空きスペースが全くありません。フロアのソファで約5時間の船旅を過ごすことになるのでした。

さて、ソフトバンクが繋がるうちにすべきことがいろいろあります。まずは本日宿泊予定だった宿のキャンセルです。楽天トラベルで予約したので、当然ながら楽天トラベルからキャンセルの手続きをするのかと思えば、キャンセルボタンがありません。さらにキャンセルの方法がどこにも書かれていません。仕方なく、宿に直接電話を入れるとキャンセルの連絡を待っていたようで、すんなり手続き完了。電話を入れた時の受け答えにとても好印象を持てたので、次回「屋久島」を訪問した時には宿泊したいと思えました。

さて、次は鹿児島市内の宿の確保です。夜間走行をしないという自分ルールがあるため、フェリーの到着時刻を考慮すると港からの移動時間はそれほどありません。宿泊代の比較検討の余地はなく、楽天トラベルで検索して港から近そうな宿で決定。

あとはJALの航空券ですが、欠航になれば全額戻ってくるためキャンセルせずに様子見。もし運行すれば私の席は空席のままフライトとなるため、返金額はゼロ。そんな中、機体を変更したので座席云々というメールが届き、JALとしてもなんとかして運行させたいという企業努力が見られます。こういうところが「さすがJAL」と思わせる。

最後に明日の予定をあれこれ検討。といっても台風の影響次第となるため、朝になってみなければ分からないというのが実情。問題は明日の宿がある「志布志」までの移動手段をどうするかですが、これについては「鹿児島中央口→鹿児島空港」と「鹿児島空港→志布志」の空港バスを乗り継ぐ方法で解決。改めて明日の予定としては「走れそうなら自走で指宿まで走る」「暴風雨なら電車で指宿まで行き、温泉街でのんびり過ごす」の2つが候補。


桜島が見えてきました。風は強いようですが、「暴風雨」ではないため、港から自走で宿まで走ることができそうです。

18時5分、港から1kmちょっとのところの宿に到着。

追記.
9月16日の台風の中の「屋久島→鹿児島」のフライトですが、1便、2便、3便と予定通り運行され、私が乗る予定だった4便が欠航。フライト時刻の1時間前になってメールが届きましたが、その時点になって現地で「欠航」を知らされてもどうしようもないと思うけど。翌日に欠航した4便と5便の分を飛ばすわけには行かないハズだから、振り替えは難しいかと。

ということで前日のフェリーで鹿児島に戻るという判断は大正解だったということでしょうか。

旅人の経験値がひとつ高まったということで、波乱の屋久島遠征はこれにて終わりです。



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