ドラマ「熟年離婚」

渡哲也と松坂慶子の大御所コンビが社会現象となりつつある熟年離婚をテーマに挑むドラマ「熟年離婚」。「モーレツ」が流行り言葉になっていた時代を生きてきた「団塊世代」が定年を迎え、それに合わせたかのように大離婚時代に突入か。

熟年離婚

冒頭のシーン、豊原幸太郎(渡哲也)が定年退職を迎えた朝、最後の出勤支度をしているとベッド脇に妻からの労いのメモが置いてあった。

「35年間、ご苦労様でした。」

このちょっとしたシーンで、「あれ?」と感じた人も多いのでは?

大学を卒業して定年まで勤務したのならば「38年」である。なぜ「35年」なのか。

これについては「きっと結婚して35年なんだろう」と直感したが、まんまその通りだったので「ひねりが足りんなぁ」と思ってしまったが、まさか妻が妻自身に対して「ご苦労様」と言っているのではと思えた瞬間、ゾッゾッとした。ドラマのタイトルが「熟年離婚」であるからして、たぶん「35年間お疲れ様。私もこれで自由の身。」ということを暗に示しているのであろうと展開を予想していたら、結局そのまんま。「私も主婦を定年します!」とは、なんという言い草なんでしょうか。

きっと、豊原(渡哲也)は真面目一筋に生きてきた人間なのでしょう。団塊世代の宿命である「ガンバレ、ガンバレ」で仕事を最優先にやってきて、会社の中ではそれなりに立場が上の役職になっていた。その代償が本人は気がついていない「家族の犠牲」であるかもしれないが、そこは家族がカバーすべき問題である。ところが、妻・洋子(松坂慶子)は夫に対して「私の気持ちなど無視して自分勝手に何でも決めてきた」などと言い「私も主婦を定年します」とはそれこそ自分勝手な人間である。

豊原は定年を機会に妻とのんびりと楽しく暮らしていこうと不器用ながらも準備を始めた矢先に「離婚宣言」されてしまい気が動転。そりゃそうですわな、突然そのような状況に落とされたら誰でも「頭の中が真っ白」になるでしょう。

話の中で「勝手に豪華な家を建てて、家のローンを払っていくのが大変だった」と妻が恨めしそうにグチをこぼしていたことから、きっと財産といえるものは「豪華な家」と「退職金」だけであると推測できる。ここで「離婚」となると財産分与の問題があり、「豪華な家」をそう簡単には売却できないだろうから家を夫が、退職金を妻が貰うことになる。ところが夫は妻との時間を持つために退職後の再就職の話を断ってしまっている。つまり一文無しで無収入になってしまうわけだ。これでは生活できんだろ。それに仕事一筋人間だったわけだから家事ができるとは思えん。

哀れな夫の気持ちなど無視して妻はさっさと離婚後の生活準備を着々と進め、仕事も既に決めてあり、住居(マンション?)も物色中。そして、定年退職を迎えた夜、定年祝いの場で家族のゴタゴタ話に便乗した勢いで「離婚してください」と叫ぶ。

あまりにも酷すぎないか、このドラマって。このままストーリーを進めていいのか。豊原が夫として父としての自分の過ちに気がつき、妻や子供たちの気持ちが分かる人間に変わっていき、最後は「まるく収まる」ことを願います。もし「離婚」で終わったとしたら、これを見た同じ状況にある妻達が決意してしまうかもしれませんよ。



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